青空の下、君の声に。

ああ、そういうことか…。

私の隣の席の人はずっと休学中だったけど、今日復帰してきて…
それが成宮くんだった、ってことか。

頭の中で冷静に整理し、一人納得する。

っていうことは、今日からここは、私の単独席ではなくなるのか…。

結構ショックが大きいかも。

いろいろな感情が頭の中を駆け巡り、なんだか頭がぼーっとする。

暑さのせいだろうか。




「おーい二宮?聞こえるかー?
よろしくって!なー!」
「わわっ!」

気が付けば目の前には、成宮くんのどアップの顔。
成宮くんのくりくりの大きな目が、私の驚いた顔を捕らえる。

びっくりした。

その一瞬で、現実世界に引き戻される。

私、成宮くんに呼ばれてたの全然気づかなかった。

今日は何回間抜けな声を出せばいいんだろう。

成宮くんに申し訳ないし、恥ずかしい…そう思うと体温が急上昇して行くのが分かる。

ていうか私、成宮くんに話しかけられてる…。
人と面と向かって話すのって、やっぱり緊張するな…。

再び私の体温、心拍数、緊張によって急上昇だ。


「よ…よろしく…」

私は成宮くんから視線を逸らしながら、小さくそう言った。

心臓がバクバクと鳴っているのが聞こえる。
今にも身体中の毛穴という毛穴から、汗が噴き出してきそうだ。

相変わらず少し声がどもったし、はきはき話すことなんて出来なかったけど…


それでも成宮くんは、満面の笑みで、

「よろしく」

そう言って、私の頭をそっと撫でてくれた。

くしゃりと笑って下がる目尻、短くてさらさらな成宮くんの髪が揺れる。

「うん…」

こんなことは初めてだった。
気付いたら私は、小さく小さく、頷いていた。




この時私は、まだ気付いていなかった。
ここから始まる、私の初恋デイズ。

青空の下、鮮やかな緑色のキンモクセイの葉が、ゆらりゆらりと揺れていた。