一時間目は受けられなかった。

休み時間に急いで教室に入る。


いつものことながら、クラスメイトは少数クラスな為に少ししか居ない。

特に話すこともない。

用があれば話もするけれど。

そのまま自分の席に直行。

私の隣が円だ。彼はつまらなさそうに窓の外を見ている。


「おはよう円」


「…間に合って良かったな」


我に返ったようにパチパチと瞬きしてから円が口を開いた。

「残念ながら間に合ってないのよ」


「…いや。何か、新しい奴が来るらしい。次から」


新しい奴。何だろう、それは。


「転校生?」


「教師」


「あら、そうなの。どんな方かしら」


「さあな」


特に興味が無いのか、円はあまり話さない。

それよりも私の顔をまじまじと見て、居心地が悪いったらない。

それも含めていつものことだからそこまで気にしないけど。


「何か、あったのか」


だから、そう聞かれたのには意表を突かれた。


「……無いわ」


「また、冷泉の父様絡みか」


どうして分かるの。

でも、もしこれが円が紫香楽のお父様に何か言ったせいだとしたら。

私はどうするんだろう。


「私が完璧じゃなかったからいけないのよ」


「…また、琴羽は」 


円は悩ましげに目を逸らした。