【短編】きっと、本気の恋だった。


「でも本当…来て良かったわ」


ジンクスを抜いてしても、この薔薇園には見る価値があると思う。


「そうだな。綺麗だ」 


綺麗だ、しか言わないのが円らしい。

無口ゆえに、円の言葉は信じられる。

私は円しか信じないから。


「ねぇ円。ずっと、一緒にいられると良いわね」


ジンクスのこともあるけれど、本当にそう思っている。

円はどうか分からないが、私は今の内に言っておかなくてはいけないと思ったのだ。

もしかしたら円に私や家族以外の大切な人が現れるかもしれない。

円がその人を愛するのなら、私は円を応援しないといけないと思うから。

だから、今のうちに伝えておきたかった。

あくまで希望という形で。

またふわりと風が吹き、円の銀髪を揺らした。

キラキラと光ってまるで星を散らしたようだ。


どんな形でも、円の傍に居たいと思うから。


円はまた驚いたようにこちらを見ている。


「どうしたんだ、お前…」

「どうもしないわ。そう思っただけよ」


そう言って笑ってみせると、まだ不思議そうにしながらも笑ってくれる。


「…そうだな」


そんな言葉が嬉しくて、思わず俯いた。

ジンクスが本当だったら良い。

きっと叶えるのは私たち自身なんだろうけど、でもやっぱり信じてみても良いかもしれないと思えるから。