「アホ。」

ほらね。
あたし、粟生の言う事わかっちゃうんだから。


「はいはい、どうせあたしはアホですよー。」

慣れた様子で側にあった椅子に腰を降ろすあたし。


「わかっとるなら来るな。」

「やだ。」

「先生の言う事は絶対じゃ。」

はぁ、と大袈裟な溜め息が、呆れ顔の粟生から落とされた。


だけど、これはいつもの事。
こんなんじゃ負けたりしないし!


「粟生は先生じゃなくって、あたしのダーリンだもん。」

「どいつがどいつのダーリンじゃと?」

「いった!!」


突然頭に走った痛みに顔を上げると

「アホは叩いても治らんけーね。」

と、意地悪な笑みを浮かべる粟生と視線がぶつかった。


そしてバサ、っと置いたクラスの進路希望に目線を移す。


大好きなブラックコーヒーを片手に。