もう一度君に会えたなら

 その続きの、どうしてダメなのかという理由が聞こえてくるのを待ちわびたが、彼がその具体的な何かを教えてくれることはなかった。

「そっか。どこかお店に入ろうか。よさそうなところがないか探しておくよ」
「ごめんね」

 わたしは「気にしないで」と言葉を綴った。
 家に人を呼びたくない理由って何だろう。

 わたしの家は急に友達を連れてきても何も言われないくらいには常に片付いていたため、よくわからなかった。

 わたしと付き合っていることを隠したいのと何か関係があるのだろうか。連れてきたらどんな関係なのか話題になることは必至だ。ただ、ずっとこのまま彼との距離は縮まらないのだろうか。

「家はここから歩いて十五分くらいのところにあるんだよ」

 あれこれ模索しているわたしの耳に、川本さんの言葉が再び届いた。

「ただ、狭いアパートだし、人を招けるようなところじゃないんだ。本当にごめんね」
「そんなの気にならないのに」
「俺が気にしてしまう」

 彼は困った表情を浮かべた。
 そのとき、川本さんの携帯が鳴った。

 彼はわたしに断ると、携帯を取った。

「いや、わざわざいいよ。だから……。少し家に帰るのが遅くなるから。分かった。お願いするよ」

 川本さんは困ったように、それでいてどこか嬉しそうな、放っておけないという言葉が似合いそうなほほえましい笑みを浮かべていた。