もう一度君に会えたなら

「きっとそうだよね」

 わたしは榮子の言葉に頷いた。

 その日、帰りがけに川本さんと待ち合わせをしていたこともあり、その話をしてみることにした。
 彼はわたしの話を聞くと、目を細めた。

「教えるのは構わないよ。もちろん今からでも。ただ、どこで勉強をするかだよね。どこか長居できそうなところがあればいいんだけど」

 彼はあっさりとわたしの提案を受け入れてくれた。だが、どこでということに頭を悩ませているようだ。
 同じ学校なら、放課後の教室でという選択肢もあっただろう。
 本音は川本さんの家に行きたいが、わたしもまだ親に言うか迷っている手前、なかなか言葉に表せなかった。

「少しならお店の人も多めに見てくれるかな。試験前でなくても、分からないことがあればいつでも聞いてもらって構わないよ」

 違う方向に話が流れていくのを察し、わたしは勇気を振り絞り、声を発した。

「お互いの家というのはどうかな。わたしも両親に聞いてみるから、川本さんも家の人に聞いてもらえれば嬉しいなって」

 川本さんは眉をひそめた。
 妙な沈黙がわたしたちの間に流れた。その沈黙を破ったのは川本さんだった。

「ごめん。俺の家は無理だと思う。そんな状態で君の家に行くのも忍びないから、できれば外がいい」