もう一度君に会えたなら

「テストが終わったら、どこか遊びに行こうか」

 わたしは目を見張った。
 彼からの初めてのデートの誘いだ。

「どこに?」
「どこでもいいよ。君の行きたい場所なら」
「考えておく」

 彼は頷いた。
 信号が変わり、わたしたちは二度目の別れをした。
 彼は慌てて信号を渡ったが、わたしの心はさっきとは違っていた。
 テストが終わったらデートができる。

 どこに行こう。遊園地でもいいし、どこかに一日ふらっと出かけるのもいい。買い物だと彼は時間を持て余すだろうか。だが、二人の最初のデートなら、よい思い出を作りたい。それなら、彼が行きたい場所に行きたい。

 もう信号が赤に変わっていて、彼の姿はもうそこにはなかった。わたしは携帯を取りだすが、すぐに鞄に片づけた。

 今なら行先も分かっているし、すぐに追いつけるだろう。
 わたしは信号が変わるのを待って、彼の後を追った。
 もっと二人で話をしたいと思ったから。

 曲がり角を曲がった時、わたしの足が止まった。川本さんが歩いていくのが見えた。

「川本さん……」