彼と待ち合わせをしたときはいつもこんな感じだ。彼はどこでもいいと言ってくれるが、バイトをしている理由が理由だけにいろいろ考えてしまっていた。こういうとき学校が一緒だったらと何度も考えてしまう。


 彼と付き合うことになっても、そうした本心は見えないままだ。
 もっと自分の気持ちを表してくれればいいのに。
 もっともそれはわたしにも言えることだ。
 付き合い始めだからか、どうしても相手に気遣ってしまっていた。

「どうかした?」
「なんでもないよ。どれもおいしそうだね」

 わたしはメニューを広げるとその場を取り繕った。
 わたしと彼はケーキセットを一つずつ頼むと、メニューを戻した。

「テスト勉強は進んでいるの?」
「一応ね。受験しないと言っても、家に帰ってすることもないから大抵勉強している。君は?」
「ぼちぼちかな」

 おそらく普通よりいいくらいの可もなく、不可もなくな成績を残すだろう。
 そこそこ授業内容も理解しているし、いつもと同じくらいだからだ。

 お店の外に目を向けたとき、わたしは顔をしかめた。
 こちらをじっと見ている少女と目があったためだ。セーラー服を着た少女。そして、あれはたしか川本さんと同じ、和泉高校の制服だ。