もう一度君に会えたなら

「でも、この話は誰にも言わないでほしい。きっと困る人がいるから」
「分かった。誰にも言わない」

 わたしは首を縦に振った。
 そのとき、床のきしむ音が聞こえた。何気なく顔をあげると、お父様とお母様が何か言葉を交わしているのが見えた。その表情はどことなく、暗い。

「部屋に戻ろうか」

 義高様はわたしの耳元で囁くと、その手を引いた。
 義高様の表情もお父様とお母様に負けず劣らず暗かった。



 わたしが本を読んでいると、部屋の扉が開いた。お母様が顔を覗かせたのだ。

「どうかなさったの?」
「なんでもないわ。ただ、元気にしているか気になったのよ」

 わたしの脳裏にあの昼間の出来事が蘇った。きっとお母様たちにも何かあったのだろう。

「今日の昼は義高殿と一緒に遊んでいたの?」

 わたしは頷いた。

「庭に珍しい花が咲いていたの。義高様の花」
「義高殿の花?」

 お母様は不思議そうに顔をしかめた。

「義高様の住んでいたところの近くに咲いていたと言っていたの。だから、義高様の花でしょう」

 わたしは思わず口を押えた。
 秘密にすると約束したのに思わずいってしまった。