もう一度君に会えたなら

※※

 わたしは桃色に咲く花の前で足を止めた。細い花びらが無数に伸びていた。
 わたしはおそるおそる、その花の先で触れた。花びらの先は想像に反して、痛くなかった。

「何をしているの?」

 義高様は不思議そうにのぞきこんだ。

「痛いのかなって思って」

 わたしを見て、義高様は苦笑いを浮かべた。
 わたしは頬を膨らませて義高様をじっと見た。

「悪かった。本当に姫は純粋だなと思ったんだ」
「じゅんすい……?」
「可愛いってことだよ」

 義高様の言葉にわたしの頬が赤く染まった。
 今まで彼からそんなことを言われたことがなかった。

「珍しいな。この辺りでこの花が咲いているなんて」

 義高様は寂しそうにその花を見ていた。

「昔、住んでいたところに咲いていたんだ」
「そうなの?」

 義高様はどんなところでうまれて育ってきたのだろう。ずっとこの城の中で暮らしてきたわたしには想像できないものだった。

「いつか義高様の住んでいたところに行ってみたいな」
「そうだね。行けるといいね」

 義高様は笑顔を浮かべていた。