もう一度君に会えたなら

 恋人とどこかに行ったり多くの思い出を作ったりすること。それは当然憧れる。
 だが、わたしの望みはそんなものじゃなかった。

「それでもいいよ。ただ、わたしはあなたに理由もなく会えるきっかけがほしいの。恋人だったら、会いたいと思えばいつでも会えるでしょう。それだけでいいの」
「変なことを言っているかもしれないけど、俺は君には一生敵わない気がするよ」

 彼はそう頬をかいて、苦笑いを浮かべた。

「敵わないって変な言い方だね。そんなにお互いのことを知っているわけでもないのに」
「俺もそう思うけど、そういう気がする」

 彼はそう優しい笑みを浮かべていた。

 恋愛はどうやってはじめるのだろう。相手を知って好きになって、恋人になりたいと願うのがセオリーなのだろか。わたしが知っているのは、顔と名前とどの学校に通っているか、あと年齢くらいだ。分からないことも多いし、驚くことも多いだろう。でも、わたしはそんな条件よりもただ彼と一緒にいたいと思ったのだ。