もう一度君に会えたなら

 潮風が彼の髪をやさしくなでた。

「それでも気づいたらここにきてしまっていた。君がいたのは驚いたけど、いや、どこかで君に会えるんじゃないかって思っていたんだと思う。君に会えてすごく嬉しかった。それで分かったよ。俺は君のことが好きなんだって」

 彼の頬がわずかに赤く染まっていた。
 わたしは彼から聞こえてきた言葉が信じられなかった。
 まさか彼がわたしと同じ気持ちを抱いてくれていたなんて考えもしなかったのだ。

 わたしの視界が霞み、彼の輪郭がぼやけてきた。

「ごめん。泣かせるつもりじゃなかったんだ」
「違うの。嬉しいの。だって、わたしもあなたのことが好きだから」

 わたしは涙を拭いながら、精一杯微笑んだ。

 何に惹かれたのかは分からない。ただ、彼と一緒にいたい。
 心の中にある何かがそう訴えていた。

 彼の顔が一気に赤くなった。わたしも同じくらい赤くなっているだろう。
 わたしも彼もどちらかともなく黙ってしまった。

「困ったな。そのあとのことを何も考えてなかった」

 彼はそう苦笑いを浮かべて、頭をかいた。

「そのあとって彼氏、うんん、恋人になってくれるんじゃないの?」
「でも、どこかに遊びに行ったりはできないと思う。きっと不自由な想いをさせてしまうから」