もう一度君に会えたなら

「もう会えなくなるのは嫌なの。だから」
「ちょっと待って。落ち着いて」

 彼はわたしを諌めた。わたしは自分の口にした言葉の意味を理解して、唇を噛んだ。
 彼は困惑の色を滲ませていた。
 きっと優しい彼はどうやって場を収めようか迷っているのだろう。

 冗談にしてしまえばいい。だが、わたしは自分の気持ちを取り繕うことができずにいた。

「もう会えなくなるなんて、そんなことはないよ。俺もずっと君に会いたいと思っていた」

 予期せぬ言葉に目を見張った。
 彼は照れたように微笑んだ。

「だから、こうして会えただけで嬉しい。すごく大事な人だと思っている」
「本当に?」
「本当」

 彼は短く息を吐いた。

「でも、冷静に考える面もあって、俺と君は正直つりあわないと思っている。俺は今の生活で精いっぱいで、君とは生活レベル自体が違うんだろうなって気がした」
「そんなの関係ないじゃない」
「関係あるよ。きっと俺の親が迷惑をかけてしまう。だから、もう会わないほうがいいかもしれないってずっと考えていた。さっき言っていたことと矛盾しているよな」

 彼は悲しそうに微笑んだ。