わたしは理由がないと会えないが、そういう意味では大姫と義高が羨ましかった。婚約者であり、同じ家に住む二人はいつでも会うことができたのだ。
近づいたと思っても、なかなか遠い。わたしは会う理由さえ探している段階なのだ。
「バイト先に行かないと約束したのが痛いよね。今頃、向こうもそう思っていたりして」
「まさか。でも、バイト先に行けたらまた違うんだろうね」
わたしはふと首を傾げた。
たしかに二人はいつでも会えた。だが、それはわたしの夢に限ればお城の中に限ったことだ。二人が一緒に過ごしたのは一年と少しの間。彼らはあの海に出かけて以降、外で会えることはできたのだろうか。たとえ監視があったとしても、屋敷の外での唯一の思い出が海だったのだろうか。
わたしたちは学校を出ると、家への道を急いだ。途中、榮子が気遣ってくれたのか、彼のバイト先に行こうかと言ってくれた。だが、行かないと言った手前、その申し出は断ることにした。もう過去のことかもしれないが、それでも彼から言われたことを破りたくはなかった。それが彼の望みなのだから。
近づいたと思っても、なかなか遠い。わたしは会う理由さえ探している段階なのだ。
「バイト先に行かないと約束したのが痛いよね。今頃、向こうもそう思っていたりして」
「まさか。でも、バイト先に行けたらまた違うんだろうね」
わたしはふと首を傾げた。
たしかに二人はいつでも会えた。だが、それはわたしの夢に限ればお城の中に限ったことだ。二人が一緒に過ごしたのは一年と少しの間。彼らはあの海に出かけて以降、外で会えることはできたのだろうか。たとえ監視があったとしても、屋敷の外での唯一の思い出が海だったのだろうか。
わたしたちは学校を出ると、家への道を急いだ。途中、榮子が気遣ってくれたのか、彼のバイト先に行こうかと言ってくれた。だが、行かないと言った手前、その申し出は断ることにした。もう過去のことかもしれないが、それでも彼から言われたことを破りたくはなかった。それが彼の望みなのだから。



