そのとき、クラクションが耳に届いた。顔をあげると、お母さんの車が脇に停まっているのに気付いた。お母さんの顔ははっきり見えないが、にやついているように見えた。

「知り合い?」
「お母さんです」
「それなら、ここで別れようか」

 川本さんと一緒にいるところを見つかってしまった。きっとからかわれてしまうだろう。
 本当は川本さんと一緒にいたいという気持ちはあったが、わたしは川本さんに別れを告げ、お母さんの車のところまで行った。そして、助手席に乗り込んだ。

 お母さんはわたしと目が合うと、にっと微笑んだ。

「あの子が弁護士になりたい子?」

 わたしは頷いた。

「かっこいいじゃない。紹介してくれればよかったのに」
「ただの友達だから」

 わたしは苦笑した。
 お母さんはわたしに理解を示してくれるが、さすがに一緒に旅行に行きたいといえば反対するだろうなとぼんやりと考えていた。