放課後、図書館に行くと、すでに川本さんの姿があった。彼は本をわたしに渡してくれた。

「このまま持って帰っていいよ。期限までに渡してくれれば俺が返すから」
「でも、わざわざ」
「いいよ。もう一度借りるのも大変だしね」

 ということは少なくとももう一度は必ず会えるということなんだろうか。
 わたしは彼の申し出を受け入れることにした。

「でも、もう今できることは調べつくしたような気はするな」
「そうですよね」

 鎌倉時代は昔すぎて、書籍とネットでこうして調べるのがせいぜいだ。

「鎌倉か。来年、お金貯めたら行ってみたいな」
「わたしも行きたいです」

 わたしは反射的にそう口にしていた。

「男と一緒に旅行なんて、両親が心配するよ」
「部屋も別にとればいいし、心配されるようなことは何もないと思います」

「お金だって、かなりかかるんじゃないかな」
「お金なら、両親が」

 そう言いかけて口を噤んだ。両親に鎌倉旅行に行くといえば、間違いなく全額出してくれるだろう。それにお年玉やらの貯金もまとまった額があった。だが、それを彼の前で言うのは気が咎めてしまった。