川本さんから今朝メールが届き、本を読み終えたので、わたしに貸してくれるそうだ。

 あれだけの本を読み、家に帰ってからも読んでしまったのは感服するばかりだ。吾妻鏡を一冊読み終えて疲れてしまったわたしとは違う。

「何?」
「歴史上の人物のことが気になっていたら、川本さんも同じ人が気になっているらしくて一緒に調べようということになったの」

「そういうことか。川本さんはものすごくまじめな人なんだね。和泉高校だし、さすがという気はするけど」
「めちゃくちゃ成績もいいみたいなんだよね」
「だったら同じ大学に行けるんじゃない? だったら、国立志願でしょう?」
「どうだろう」

 わたしは榮子の言葉にドキリとして、あいまいにぼかした。
 彼は大学に行かないなど、言い出せなかったのだ。

 彼のお父さんがわたしの両親のような感じだったら、きっと彼も夢を追い続けることができただろうに。