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 木目調の部屋に「わたし」は座っていた。艶やかな朱色の花が描かれた着物のようなものを着ていて、書物のようなものに目を通していた。
 外が心なしかざわついているのに気付いた。
 それだけではなく、わたしの心も不思議とざわついていた。

 何があったんだろう。そもそもわたしは何でこんなところにいるんだろう。
 不思議に思いながらも、思うように体は動かなかった。

 わたしは近くにいる女性に聞いてみることにした。

「どうしてこんなに騒がしいの?」
「今日はお客様が来られるんですよ。姫様も近いうちにお会いになるかもしれませんね」

 彼女はそうはにかみながら微笑んだ。
 姫様というのはわたしのことなのだろうか。

「どなた?」
「それはお母様にお聞きになってください。わたしの口からは」

 その彼女の様子が妙に引っかかった。
 わたしはその人に「会いたい」と思ったのだ。それどころかあわなければいけないととっさに感じ取っていた。

「今から、お母様のところに行ってきます」
「それはおやめになったほうが。来客もいらっしゃいますし」
「用事はすぐに終わるわ」
「しかし、姫様」
「お願い」