そう思い、帰ろうとしたわたしの足はおのずととまった。イスに座って何かの本を読む川本さんの姿があったからだ。連日彼に会うなんて、なんて偶然なのだろう。
どう話しかけようか。そんなことを考えていたわたしの思考は止まった。なぜなら、川本さんはものすごく思いつめたような表情で本を読んでいたためだ。
話しかけないほうがいいだろうか。そう思ったとき、彼が立ち上がった。その彼の視線がわたしのところで止まった。わたしは会釈し、彼の読んでいた本に視線を移した。わたしは眉根を寄せた。
「吾妻鏡?」
わたしは驚きの声をあげた。
有名な本なので彼が呼んでいてもおかしくはない。彼も読書が趣味なのかもしれない。だが、このタイミングで彼がこの本を読んでいることが妙な気分だった。
彼は会釈すると、わたしのところまで来た。
「たまにはこういうのも読んでみようかなと思ってね。何か本でお探していたの? 俺の用事はすんだからよければ手伝うよ」
「その本を読みにきました」
わたしが吾妻鏡を指さすと、彼は目を見張った。
「どうして」
だが、彼は首を横に振った。
「さっきまで読んでいた俺がいうことじゃないか。じゃあ、これは君に」
どう話しかけようか。そんなことを考えていたわたしの思考は止まった。なぜなら、川本さんはものすごく思いつめたような表情で本を読んでいたためだ。
話しかけないほうがいいだろうか。そう思ったとき、彼が立ち上がった。その彼の視線がわたしのところで止まった。わたしは会釈し、彼の読んでいた本に視線を移した。わたしは眉根を寄せた。
「吾妻鏡?」
わたしは驚きの声をあげた。
有名な本なので彼が呼んでいてもおかしくはない。彼も読書が趣味なのかもしれない。だが、このタイミングで彼がこの本を読んでいることが妙な気分だった。
彼は会釈すると、わたしのところまで来た。
「たまにはこういうのも読んでみようかなと思ってね。何か本でお探していたの? 俺の用事はすんだからよければ手伝うよ」
「その本を読みにきました」
わたしが吾妻鏡を指さすと、彼は目を見張った。
「どうして」
だが、彼は首を横に振った。
「さっきまで読んでいた俺がいうことじゃないか。じゃあ、これは君に」



