わたしは榮子と別れるとため息を吐いた。
あの英語のテストが帰ってきてから、川本さんのことをずっと考えていた。ここ最近のわたしはとても妙だ。いつもならさらっと流せることさえ、心に引っ掛かってしまう。
あの大姫と義高のこともそうだ。なぜ、あんな夢を見てしまうのだろう。
「吾妻鏡か」
吾妻鏡という本に二人のことが記されているそうだ。そうはいっても二人に関することを事細かに記されているわけではないようだ。もともと歴史的に大きなことをしたわけではないので当然といえば当然なのだろう。
わたしは携帯で時刻を確認した。まだ夕食までには時間があった。わたしは図書館に行き、吾妻鏡を呼んでみようと決めた。
図書館は平日の夕方ということもあってか、人気も少なかった。わたしはすぐに古典文学が並んでいる棚まで行った。そして、目を走らせ書物を探すが、それらしい本は見当たらなかった。置いてない可能性もゼロではないだろう。だが、中学の授業で何度か出てきて、名前だけは知っている本なので、図書館にないとは正直考えにくかった。
また違う日に来たらあるのだろうか。



