いつも通りに振る舞わないといけない。
 部屋の外に出ようと障子を開けたわたしは顔を引きつらた。
 そこにはいつもはめったにここに来ないお父様の姿があったのだ。

「お父様、どうしてここに」
「義高殿の姿が見えないと聞いたものでな。義高殿は?」

 お父様は部屋の中を見渡した。
 部屋の中にいるのはわたしと小太郎様だけというのは一目瞭然だ。

「今、庭に出られていて」
「今日、妙な話を聞いてな。出て行った女たちの人数が出てきた人数と戻ってきた人数が違っていたと。数え間違いかもしれないと考え報告が遅れたようだが。おぬしは知っておろう。義高はどこに言った?」

 お父様はすごみのある表情で小太郎様に歩み寄った。
 体中の鳥肌が立つ。

「存じませぬ」
「これでも同じことが言えるのか?」

 お父様は刀を抜くと、小太郎様の前に突き立てた。
 彼は眉一つゆがめず、お父様を見据えた。

「もともとここに来た時からいつ命を失ってもおかしくないと考えておりました」
「やめてください」