もう一度君に会えたなら

　ふさわしいとかつりあうとか、そんなのはどうでもよかった。わたしはただあの人と一緒にいたいのだ。

「絶対に嫌」
「高校生のときの恋なんていずれダメになる。わざわざ傷つく必要なんてないのよ」
「そんなの分からない。わたしはあの人のことが好きなの。ずっとずっと好きだった」

　そうあの時から。
　わたしの頭の中で何かが砕け散った。その破片が刺さったのか、目に涙が浮かんだ。
　蘇るのは今の太田唯香として生まれる前の、ずっと前の記憶だ。

「義高様」

　夢なんかじゃない。あれはわたしの記憶だ。
　わたしはずっと好きだった。一緒にいられなくなっても、義高様がお父様に殺された後も。
　お父様もお母様も言っていた。幼い恋心はいずれ消える、と。だが、先に消えたのはわたしの命の灯のほうだった。
　その気持ちは姿も名前も時代が変わった今でも続いてた。


「何を言っているの？　わたしはあなたのためを思って言っているのよ。来なさい」

　お母さんはわたしの腕を掴んだ。長身のお母さんに引きずられ、私は車の中に押し込まれた。