このままだと彼女が原因だと勘違いしてしまう。彼女が悪いわけではないのに。

「違うの。榮子」

 わたしはやっとの想いで言葉を絞り出した。

「大丈夫だから」
「でも、泣いているじゃない」
「本当に違うの。彼女はただわたしが気になってくれていることを教えてくれただけで」

 なぜあの夢の中のできごとがこうして鮮明によみがえるのだろう。
 まるで自分で見てきたかのように……。

 榮子は唇を噛んだ。
 彼女は江本さんを見ると頭を下げた。

「ごめんなさい。つい、わたし」
「いいのよ。でも、大丈夫? 体調が悪いなら病院に行ったほうがいいよ」
「ありがとうございます。でも、大丈夫です」

 わたしは首を横に振った。

 そのとき、江本さんの携帯が鳴る。彼女は発信者を見て顔を引きつらせた。電話を取ると言葉を交わしていた。
 そして、携帯を片づけると頭をかいた。

「そろそろバイトに戻らないといけない。ごめんね」
「いいえ。こちらこそありがとうございました」

 わたしと江本さんはそこで別れることにした。