彼女は義高様に目くばせした。義高様は顔を強張らせた。だが、すぐにその表情が緩んだ。そして、さっきの姿が見間違いかと思うほど、彼は優しい表情を浮かべていた。

「今日は部屋に戻ったほうがいい。冷えるからね」
「義高様がそういうなら戻ります」
「今日は部屋から出ないほうがいいよ」

 彼が言っている意味はよく理解できなかったが、自分の部屋に戻ることにした。

 
 日が暮れてからお母様がわたしの部屋にやってきた。彼女はわたしを見て、安堵したように見えた。

「今日は何か変わったことはなかった?」
「雪が降っていたの。まだ降っている?」

 部屋から出てはいけないという義高様の言いつけを守っていたため、わたしには外の世界がどうなっているのか分からないままだった。

「雪?」

 お母様は意表を突かれたような表情を浮かべた。そして、女性に目くばせをした。

「まだ降っているわ。ほんの少しだけだけど」
「よかった。明日になったら義高様と一緒に雪で遊ぶの。積もるといいな」