ただ、結婚や就職なんてわたしにとっては当分先のことだ。それこそ、昔の時代とは違うのだから。
 そのとき、先生が入ってきたため、わたしはテキストを机の上に出した。


 学校を出ると一息ついた。
 明日学校に行けば休み。かといって週末になにか予定があるわけでもないのだけれど。こんな面白みのない毎日を積み重ねていくのに何の意味があるのだろう。学校に行くのは面倒だし、休みはきてほしいが、受験なんて面倒なものはこないでほしいとは思う。将来の選択なんてあと五年くらいは先延ばししたい。だから、わたしはお母さんの勧めるままに法学部に行くんだろうという気がしていた。

 隣を歩いていた榮子が足をとめて、お腹を押さえた。

「何か買って帰らない? お腹すいちゃった」
「いいけど」

 わたしは榮子に誘われるがまま、コンビニに入った。
 榮子はお菓子コーナーで目を輝かせながら、お菓子を選んでいた。

 特にお腹が空いていなかったわたしはチョコレートをひと箱と飴玉を一袋買うことにした。
 勉強中にでも食べればいいだろう。

「先に支払いを済ませてくるね」
「分かった」

 わたしはその足でレジまで行く。そして、レジでチョコを差し出した。
 だが、わたしの動きはそこで止まった。わたしは目を見張るのを自覚した。なぜかといえば、わたしの目の前にいたのが昨日見かけたあの人だったからだ。

 彼も一瞬目を見張った気がしたが、すぐに目をそらし、商品をスキャンした。