いつもの空き教室で、待っているだろう、と見当をつけて、私は呑気に、門の見え始めた道を歩いた。

そうして、学校に着く。空き教室の扇風機がまわっているのが廊下から見えて、そこに叶多がいることを疑いもしなかった。

「おはよう叶多、……あれ?」

だから、扉を開きながらそう言って……しかし、すぐに違和感に気が付いた。

がらんどうの教室。叶多どころか、誰の姿も無い。それに、何かが違う気が、する。

叶多は、まだなのだろうか。まさか本当に、寝坊なのだろうか。行く前に、家に寄ってくれば良かったかも?

「あ、澄ちゃんおはよー」

入口に立ち尽くしたままの私の背後から、脳天気な声が飛んでくる。振り向くとやはり、真理がいた。

「あ……おはよう、真理」

「うん。今日も暑いねー」

短いやりとりを交わして、真理は入口に突っ立っている私を抜かして教室へと入っていく。いつも座る机に、図書室から借りてきたのだろう参考書を置いている。よく見ると机の横に鞄が置いてあったから、先に教室に来ていたのだろう。扇風機も、真理が付けたのかもしれない。