(面倒臭いこと、この上ないな…。無駄な時間を費やした)

俺は早々に会議室を後にした。


委員長を仲介しての、いわゆる告白…というやつ。

当然のことだが、きっぱりとお断りを入れた。


自分に好意を持ってくれる…。本来ならば、少なからず喜ばしいことなのかも知れない。

だが、自分はそうは思えなかった。


「だいたい、お前に俺の何が分かる?」


本当は言ってやりたい。

どこを見て『好き』などという言葉を口にするのか。

到底理解の出来ないことだった。

本当の自分のことなど、何も知らない癖に。


自分が相当ひねくれているのは分かっているつもりだ。

だが、それでも外見だけで人を『好き』と簡単に言える輩には、興味も何も持てなかった。



昇降口を出ると、今にも雨が降り出しそうな怪しい雲に思わず足を止めた。

すると、たまたま横で一人作業をしていた主事の男が「あれ?」と不思議な声を上げた。

「………?」

その男の見ている方向へと何気なく視線を向けると、遠くの樹の上に人が登っているのが見えた。

「あんな所に女の子が…。何をやってるんだ?危ないなぁ」

主事は独り言のように呟くと、注意をしに向かおうとそちらに足を向け掛けた。

だが、その時。


突然、ゴオーッ…と唸るほどの強い風が辺り一帯を吹き抜け。



(あ…落ちた…)


その女生徒が木から落ちていくのが見えた。