一之瀬君の眼に私が映ってる。

 
 その眼を見ていると一之瀬君と出逢ったのは、偶然でも運命でもなく、必然だったんじゃないかと思ってしまう。


 絡み合った手はいつになく心が揺れる。


 ずっと一緒に居たい。
 けど一之瀬君は絵の世界に居る。


 それでも離れたくない。

 この一瞬が私にとっては貴重すぎて、離れるのが恐い。


 しっかり繋いだ手はいつしか離さなきゃいけない。



「私、一之瀬君から電話かかったとき、絶対行こうと思ってた。

 けどっ、一之瀬君は絵が一番でその世界を壊したらいけないって思って、行くのをやめようとした!!

 私……迷ってしまった。

 こうしてる時間も一之瀬君は私みたいな平凡な所なんかじゃなく、自分の夢のある所に帰らなきゃダメなんだよね!」


 精一杯の笑顔。

 その笑顔はきっと悲しみも苦しみも交じり合っていたはず。


「でもっ! 一之瀬君と一緒にいたい!! このまま一緒にっ――!」


 私の言葉を遮るかのようにいきなり一之瀬君は私を抱きしめた。