誘う幻想 ノーカウント37

「何で!?早名お姉ちゃん!」

鈴鹿さんがさなさんのところに行こうとするのを森田さんが止める。

「あいつは早名じゃない!」

鈴鹿さんは俯いて、そうだ、ちがうんだと言った。早名さんという人は一体誰なんだろう?鈴鹿さんの大切な人だということは分かる。

「気をつけろ!本気で殺しに来るぞ!」

日比谷さんが警告し、右に移動するよう指示する。危険を感じて走って移動する。
さなさんはさっきまで私たちがいたところに移動していた。

「近くに来られたら死んじまうな」

日比谷さんがそう言った。さなさんは何事も無かったかのように鎌を持ちなおす。

「来るぞ」

今度は声の大きさを抑えて言った。どこにいけばいいのか分からず、とにかく右に移動する。
さなさんは日比谷さんの方に向かって走る。そして、目にもとまらぬ速さで鎌を振りまわした。

「くっ!」

間一髪避けたけれども、体制を立て直す必要がある。その間をさなさんは狙おうとしていた。

「駄目!」

私は音量を最大にして叫ぶ。時間稼ぎくらいなら出来るかもしれないと思ったからだ。
無事日比谷さんは体制を立て直し、さなさんから離れる。よかった……

「おい羅雪、逃げろ!」

「えっ?」

安心したのもつかの間、殺気を感じた。

「見つけました。まずはあなたから命を奪います」

光の無い目で私を狙う。
油断していた。森田さんに言われるまで、標的になっていたことに気付かなかった。