「森田さん、この子が羅雪ちゃんです」

「初めまして……」

目を合わすのは苦手なので目をそらしながら言う。

「ここに来ていませんが大丈夫なのですか?」

「あっちには晶がいるから大丈夫だよ」

政府と戦う人は他にもいるらしい。
出発の時、一応棒も持っていく。

「今度こそ、行くのですね」

「待っていてくれるか?」

「もちろんです」

美貴さんと森田さんがどういう関係なのかがわかった。さっきので確信した。
家を出て、これから飛行船に乗って政府のところに行く。

「羅雪ちゃん、歌うときは楽しむことを忘れないで」

美貴さんの言葉で、私は気付いた。そっか、上手く歌うこととか自分には無理とか、そんなことばかり考えてた。

「はい!」

駆け足で飛行船に乗りこむ。
私には、歌が好きということしかない。歌が好きじゃなくなったら何も残らなくなる。
必要だったのは、力じゃなくてこの気持ちだったんだ。