誘う幻想 ノーカウント37

中に入ると、寝込んでいる美貴さんがいた。

「犯人、見つけたの」

「私なんです……ごめんなさい!」

私は頭を下げた。

「この子……多分政府に何かを言われたんだと思う。またあいつが現れたの……」

「また……何で子供ばかりを……」

私の他にもいたんだ。

「あの……これで、私をバコーンとやっちゃってください!そうしたらまた歌えるようになるんです!」

「え?」

私以外の全員の声が揃った。

「えっと……この棒……力を奪えるんです」

決して変な人ではない。

「……えっと、ほんとにするの?」

「はい!思いっきり!」

「うーん、やりづらい」

覚悟はできている。背中に衝撃が走る。

「うぐぅ!」

「えっ!?力抜いたのに何で!」

呪われてるのかな、あれ。

「大丈夫?」

倒れかけた私を支えてくれる。

「はい、ありがとうございます」

姿勢を直し、美貴さんの方を向く。

「申し訳ありませんでした」

「反省しているならいいの。もう、しないでね。あと……あれをどうやって手に入れたの?」

私はこの世界に連れてこられたことから全てを話した。

「この世界に連れてきて何かを渡す……それが政府のやり方なのね」

ここの政府は何を考えているんだろう。

「羅雪ちゃん、これから政府に狙われることになるかもしれない」

「狙われますね」

「もしかしたら、政府と戦うことになるかもしれない」

戦う、平和な世界で育った私には想像できない。けど、ここまで来たんだ。

「迎えうちます!折角ここまで生きてこれたんですから」