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円衣裕太と本田が帰った後の静かな事務所の中…
私は声を出す事も無く、放心状態のまま泣き続けた
手はずっと蝶のネックレスを撫でていた
佐「いつまでそうしてるつもりだ?」
声をかけてきたのは佐々木だった
佐々木は自販機で買ってきた暖かいココアを私の前に置いた。
こんな時にココア…
円衣裕太を思い出す
私はそのココアの缶を思い切佐々木に向かって投げ付けた
佐「痛…危ないよ…何するの?」
美「…最低。」
涙を流し続ける瞳は佐々木を思い切り睨んだ
その瞳は微かに、殺意さえ芽生えていた
佐「全部俺のせいにされてもな…
恋愛するのは勝手だが、バレたんだから俺はそれなりの対処をしただけだぞ?
美織にも、円衣裕太のこれからの俳優人生にも傷が最小限になるよう俺は悪者を買ってでたんだ」
美「…なら、そういう風に説明してくれればいいのに…どうして私が騙した様に言うの?」
佐「突き放さないと、円衣裕太はまた美織の所に来るだろ。冷静に話して素直に別れるのか?
それこそ、無い話だろう
はぁ…ま、今日の仕事はとりあえずみんなキャンセルしたから…明日からはいつも通り仕事に戻ってくれよ。頼むから…」
佐々木は転がっているココアを拾うとまた私の前に置いて事務所から出ていこうとした
佐「あ…そうそう。週刊誌やニュース見な。自分がどれだけ世間を騒がせたかわかる筈だよ」
そう言うと佐々木は事務所から出て行った。
一人になった事務所の中、私は苛立ちと悔しさを隠しきれずにまたココアの缶を掴むと事務所に大きく貼られている瑞乃美織のポスター目掛けて力いっぱい投げつけた
瑞乃美織のポスターには、後ろの壁ごと穴が開いた
美「ハァ……ハァ……」
足元に転がって戻ってきたココアの缶が、指先にコンと当たった
何かのスイッチが押されたみたいに私は赤子のように声をあげて泣いた

