「紫音?」



ボーッとしていたのか…

いつの間にか会話を終わらせていた煌暉くんが、私の顔を覗き込んでいた。

いきなりの"どアップ"に、



『きゃっ…』 ゴンッ



私は思わず仰け反ってしまい、

背にしていた下駄箱に、おもいっきり頭をぶつけてしまった。



「ゴンッ…って大丈夫か?」



後頭部を押さえようとした手に煌暉くんの手が重ねられて、私の代わりに打ち付けた部分へともう一方の手が触れてくる。



「"音"だけで大丈夫そうだけど……痛むようだったら保健室行く?」

『大丈夫。保健室。行かない』

クスッ



私の返答に、なぜか笑う煌暉くん。



「マジで?片言だけど?」

『へ?』

「やっぱ行っとくか」

『え?いえいえ大丈夫です』

ククククッ

「おいで」

『は?いや…だから……大丈夫って』

「いいから。いいから」



煌暉くんはそう言うと、戸惑う私の手を引いて歩き出した。