『んぐ…』



小さな声が漏れ聞こえた。


だけど紫音の行動は止まることなく、自分の口元を押さえている俺の手を掴んで、それをゆっくりと引き下ろした。



『ひどい。……手で塞ぐの…やっ』



上目使いで抗議され、掴んでいた手の一方を放し、その指先をまた俺の唇へ押し当てる。



『いつもみたいに……ここがいい』

「「「…………………」」」



その一部始終を、呆然と見て、聞いていた母さんと兄貴達が、さらに呆然としたのがわかった。



(俺…倒れそう………)



"とろん"と変わった紫音の表情と瞳が俺に向けられて、そのまま首も傾げてくる。



「エロっ」「勃ちそう」

「こらっ!天星」

「だってヤバいでしょ」

「煌暉だって俺らがいなかったら、即押し倒してるって」



また勝手な会話が囁かれ、



「ダメよ!煌暉」



母さんまでもが、それに便乗とか……



「しねーわ!!」

「紫音、来て」



俺はこの状況から逃れるために、とりあえず自室へ向かうため紫音の手を引いた。