「イヤだし。何で?」

『だって……お料理がお得意なんですよね。だからダメ』

「ダメって……返すわけないじゃん。もう俺のだし」



私の要求も虚しく煌暉くんはそう断ると、小箱にかかったリボンを解いて、それを開けた。


そして、お行儀良く並べられたチョコの中から1粒指先でつまむと、そのままそれを口の中へ入れる。



「ん。美味いじゃん。何心配してんの?」



そう言いながら、もう1粒口へ運んだ。



だけど、その直後に私へ伝えられたのは、言葉じゃなくて……


それを含んだ煌暉くんの唇と、その様子を黙って見ていた私の唇とが重なっていた。


そのいきなりなことに、



(え?)



と思ったけど、すでに私の肩には煌暉くんの腕が回されていて、その煌暉くんがそのまま自分の方へと私を引き寄せた。

そして、同じ方の手が私の顔を上向かせたかと思ったら、それと同時に顎にかかっていた指が私の口を開けるようにそこを動かしてきて、それが少しの隙間をそこへ作ると、少しだけ溶けていたチョコレートが移されてきた。



私の口の中へ、その甘さが広がった。