そう言って煌暉くんが差し出したものは、また箱で…
それは私の両手のひらにピッタリ収まるくらいの丸い箱だった。

「開けて?」

デジャブのようにまた繰り返された言葉。

だから私はまたそれを受け取って、その箱を開いた。

『これ……』
「プリザーブドフラワーの“フラワーケーキ”。
だから食えねぇけどな。
紫音の誕生日にかけてんのもあるけど…“月記念日”つーの?そのお祝い。
その俺達が“ちゃんと”つき合い出した、俺が紫音を空港まで迎えに行った日のこと覚えてる?」
『……もちろん…覚えてますよ』


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“月瀬紫音さん”
“はい”
“月瀬紫音さんが好きです。
一煌暉と“彼女彼氏”としてつき合って下さい”
“は…い。一煌暉さんの“彼女”として、月瀬紫音を傍にいさせて下さい。
その月瀬紫音の“彼氏”として一煌暉さんに傍にいて欲しいです。
一煌暉さんが大好きです”


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忘れるはずない。

あの日、イギリスでその想いは通じ合ったけど、私が帰国した8月7日に、改めて私に交際を申し込んでくれた煌暉くん。

あのまま雰囲気に流されることなく、煌暉くんの誠実さを実感した日。