『……あの?』

その会話の直後、私の目の前に置かれた細長い箱。

私はそれを差し出した煌暉くんへ問いかけた。

「おめでとう。今日は俺にとっても特別で大切な日」
『?』
「やっぱり……っていうか、紫音ってマジで自分のことになると無頓着だよな……」
『え?』
「誕生日。1月7日は紫音が生まれた日だろ。
今日一日見ててずっと思ってたけど、やっぱ忘れてた?」
『あ………』

煌暉くんにそれを指摘されて思い出す私は何なんだろう。
もしかしなくても、今日一日の行動は私のためにしてくれていたことが今さらながらわかった。

だからさっき煌暉くんが何か言いかけたことと、苦笑していたことの意味までわかって、それを今オープンにしたことでまた煌暉くんの顔が呆れていて恥ずかしくなる。

だけど、今度は微笑みも合わせて向けてくれるから、

『私……自分の誕生日が今日だって言ったことありました?』

ふと思った疑問をまた投げ掛けた。

「ん?言われたことはねぇよ」
『え?じゃあどうして……』
「つき合ってすぐぐらいに、生徒手帳の写真を見せ合ったことあったじゃん。そん時に」

煌暉くんがそう言ったことで、その時の私と煌暉くんが同じだったことに嬉しくなる。

「俺の知ってる?」
『はい』
「別に何か欲しいってわけじゃねぇけど、俺の生まれた日も覚えといてくれると嬉しい」
『はい。喜んで』
「…………喜んでなの?もちろんとかじゃなくて?」
『おかしいですか?』
「いや。それいいな。嬉しさが増す感じ?ん。紫音ぽくて可愛い」