【野いちご版】やっぱり君にはかなわない〜花と光と奏でSS

「紫音の歌か……サプライズだけど、それ以上にサプライズだな」
『?』
「ん。こっちのこと」

俺はあの甘い声音を思い出して、俺はもちろん、そのカップルやそれ以外の観衆にも何かが響き届いたはずで、特別な時間になっただろうな、とそれを考えて心があたたかくなるのを感じた。

「でも紫音英語じゃねぇの?」
『はい。会話が成り立つ時はそのまま話すんですけど、そうじゃない時は叔母様が通訳として間に入ってくれるんですよ』

身なりを整えながら、ニッコリ笑ってそう説明してくれたことに、俺はその役目を即買って出た。

「それって俺でも問題ねぇよな?」
『え?』
「オーナーは俺のこと知ってるし、俺と紫音のことも知ってる。それにオーナー自身が間に入るのは通訳だけのことじゃないだろ?だから俺が代わりに入っても本来の目的と変わんねぇし、っていうか効果絶大になんない?」
『効果?』
「フロアに出るんだよな?
今日来てる常連には悪いけど、“俺の”って公にしたい」
『…………』

俺の独占欲丸出しの言葉が、紫音の顔をみるみる内にまっ赤に染めていく。
俺はその紫音の手を引き、ドアの外で待っていたオーナーに、

「俺が“ボディーガード”で入りますので」

と告げた。

その俺の申し出にオーナーは一瞬驚いた様子だったけど、すぐに察してくれたのかその表情を微笑みに変えて、

「頼もしいナイトね。こっちよ」

と快く了承してくれた。