『これでいいですか?』

目元にも笑みを浮かべた紫音が、俺に確認をしてくる。


"ウィッグは……まぁいいか。元々近い色してっしな"


「ん。俺の紫音だ」

俺は髪のことは思うだけにして、そう答えながら紫音に近づいた。
そしてそれ以上に気になっていたこと、


「紫音が着るドレスは、これからは俺が選ぶから」


俺にとって最大の懸念材料なことを、今度はお願いじゃなく、宣言の言葉で紫音に伝えた。

『え?』
「わかった?」
『………』

俺のその強引な物言いに、ちょっと頬を膨らませた紫音。


"ヤベぇ…可愛い"


だけど、紫音の鈍さは多分まだ継続されているから、俺はそのまま強引に話をすすめる。

「紫音、いいよな?」

それなのに、

『でも………このドレス……ちょっと肌は見えてますけど……
デザイン可愛くないですか?』


"……やっぱり鈍………じゃなくはないけど……
つか、それちょっとじゃねぇし。谷間ダメ。俺だってまだその下見てねぇのに……って違う違う、何考えてんだ俺(焦)"


『この胸元からのレースアップの部分とかおもしろいんですよ。リボンほどくと簡単に脱げちゃうんです』


"…………は!?"


『普通は背中とかサイドにチャックがあるのに、このタイプはなくて、これで調整するんです』


俺の焦りなんか気づきもしない鈍々紫音は、そう言いながら、無意識なのか胸元にあったリボンを引っぱり出した。


"おいおいおい……………"


と俺は突っ込む間もなく、咄嗟にその身体を抱きしめる。
その俺の行動に、一瞬ビクッとたじろいだ紫音だけど、リボンに掛けられていた指先は、すぐに俺の胸元のシャツに絡められた。