「本当は俺が迎えに行くはずだったのに…マジむかつく」

隠していた部分をさらけ出したことで俺への遠慮が無くなった七聖が、あからさまに不機嫌さを向けてくる。

元々遠慮と言うよりかは、からかってたと表現する方が正しい気もするけど。

「“誰にもやらねぇ”つったじゃん」

だから七聖のそんな態度にも本当の姿を感じることが出来て、俺はそれが嬉しいとさえ思えた。

「やってらんねぇ……嫌味も通じねぇのかよ」


"……嫌味だったのか"


「いいよ。お前のことは認めてるし、紫音もお前じゃないとダメだしな」

それを聞いて、口元がゆるむ。

「名前出した途端にその顔……単純すぎて笑えるわ」


"何とでも言え"


「邪魔する気なんてさらさら無かったし、早く行けよ。
遅れたらスマホ持ってねぇ紫音に会えなくなるぞ」

自分のスマホで時間を確認した七聖が、呆れた顔でそう言った。

「ああ。サンキュ、七聖」

俺は笑顔で返し、待たせていたタクシーへ乗り込んだ。



「空港まで」


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