"襲われるのも、悪くない"

"紫音限定だけどな"


そんなことを思いながら、初めて交わすには十分すぎるほど、その唇を味わった。


**


「あーーーー……打ち合わせ行きたくねぇ」

ギュッと紫音を抱きしめる腕に力が入り、思いの丈をそのまま声に出した。

『ダメですよ。約束なんですから』

さっきまでの0㎜の距離があとを引いていて、
このまま二人きりでいたいと思っている俺の心境とは裏腹に、あっさりとこのあとの予定を全うしようとしている紫音に寂しくなる。


「じゃあもう一回」


だから俺はそうキスをせがみ、そんな紫音に顔を近づけようとしたら、紫音の指先が俺の口唇へそっと触れてきた。


『これ以上は赤くなりすぎちゃうので……』


紫音の甘く囁いた声と、艶めいた瞳が俺を射ぬいた。

視線をそう言った紫音の口唇へ移せば、元々赤く色づくそこがさらに赤味を帯びていて…


"え!?俺そんなに?"


ボッと瞬時に顔が熱くなる。


"マジか……やっぱ自制する自信ねぇ……"


心の中で弱気なことをつぶやいていると、
少し顔の位置が高くなった紫音が、背伸びをしたことがわかった。


『でも、これなら大丈夫ですよね?』


ゆっくりと近づいてきた顔が、俺の頬へその口唇を触れさせてきた。
だから紫音のその行動に自制どころの話か、半分残ってた理性まで持っていかれて…そんな俺のとった行動は……


「紫音……煽ってどうすんの?」


紫音の耳元で囁き、そのままそこへ顔をうずめた。

さりげなく髪をよけて首筋へキスを落とすと、ピクッと身をよじらせた紫音。


可愛くてたまらない。


そして俺は紫音には内緒でそこへ小さな一片の花を咲かせた。


"とりあえず…ガマン出来る……かな"


その自己満足の花びらを見つめながら、俺は目元をゆるませて、静かに両口角を上げた。