「母さん、用は済んだだろ。さっさと帰れよ」


ジャマすんな。という顔で俺がそう言えば、

「うゎっ、サイテー。それが母親に対する言い方!?
紫音ちゃんも、独占欲の塊男が嫌になったら遠慮しなくていいからねぇ~。
家(ウチ)にはあと2匹ピチピチなのがいるから」

それが兄貴達をさして言ったのがわかり、

「それこそ母親が言うことかよ!」
「お互い様。べーっだ。」

舌を出して、母親らしからぬ態度。


『お母様』

そんな二人のいがみ合うやり取りに、優しげに母さんを呼んだ紫音。
その声に俺と母さんは同時に紫音へ視線を移した。
そこで視界へとらえた紫音の微笑む姿に二人してデレる。

『フフッ 同じ顔ですよ』

その言葉を聞き、見合わせた顔は間違いなく母さんの血を濃く受け継いでいることがわかって、俺は苦笑がこみ上げた。

「マジかよ」

ボソッとつぶやきに近い声まで出てくる。


「血は争えないわね。近い内に電話するから。
またね、紫音ちゃん」

俺の言葉にそう返しながら立ち上がった母さんは、俺の肩をポンッと叩くと、もう一度視線を紫音へ移してから店を後にした。


俺は母さんがいた場所を見つめて改めて思う。



"血縁者に会わせたくねぇ"



「…………………」