「煌暉が認めないと、後々いろいろと困るわよ?
新企画のコンセプトは“ラブカップル”だし、絡み多いから」

フフンッとした顔で、俺を試すような物言いをした母さんに、さらにイライラが増して腹が立ってきた。
たけど、

『ダメです。私がやります』

目の前の紫音が思いがけないことを言った。

「じゃあ反対してる煌暉には降りてもらって、他のモデルから…」
「誰もやらねぇって言ってねぇし!!」

母さんの言葉に被せるように言った俺に、ニヤッと笑った母さんを見て、まんまと罠に嵌められたことがわかった。

「じゃ、決まり。二人ともよろしくね」

そして母さんの満面の笑顔が俺達に向けられた。


"はなからそのつもりだったくせに…"


初めて紫音を目にした時から、その姿に惚れ込んだ母さんが、俺に無断で紫音と接触して口説き落としたぐらいだ。

紫音を溺愛してる俺が知れば、全力で阻止することが目に見えていたんだろう。さっきの絡みの件も、それとなしに紫音には話していたのかもしれない。

だから、紫音が自分がやると言い切ったことに、これ幸いと俺にカマをかけたんだ。

正直紫音の発言には驚いたけど、それよりも俺へのやきもちがわかって、今さらながら嬉しくなる。