それでも、あくまでもシークレットの存在の紫音に再会出来るのは、奇跡に近かったはず。

なのに、偶然にもまた会うことが重なって、何度めかの会話の時に、これまた偶然に俺の母親だということがわかり驚いた紫音と、俺の彼女が紫音だとわかった母さんが、運命だと言わんばかりに、紫音を口説き落とした。


俺に相談することもなく、母さんの誘いに頷いた紫音。
それが寂しくて、やるせない気持ちになる。


しかも今日のデートに、母さんがもうすぐここへ来るなんて聞いてない。

俺は余計な嫉妬心まで感じて、つい口調が冷たくなってしまったのは仕方がない……ことだと思いたい。

そして今、紫音のそんな表情と仕草にいつもならやられてしまう俺も、余裕がないのか、それに耐えきったことを自分で褒めてやりたい。


"……って違うだろ(怒)"


イライラする気持ちを押さえつつも、

「何でOKするの?」

ハァ…と俺から溜息が漏れた。

『…………だって、……煌暉くんのお母様ですよ?』


"……“様”とかってガラかよ"


「俺、前に言ったよな。ダメって。他のヤツらに…………
あ"ーーーーー……もうっっ。ムリ!!絶っ対イヤだし」
『私がお相手じゃ……嫌ですか……………』

ショボンと語尾を小さくしながら、その身まですぼめていく。


"!!?"


「違っ……相手のことじゃないから。イヤなのは……」

紫音のその様子に、また違った方向に解釈をしたことがわかって、俺が慌ててそれを言い直そうとした時、

「お待たせ~~~」

突然後ろから響いた声。

「何が嫌なの?」
「母さん」『お母様』

俺の母親が傍らに立った。

「や~~ん♪紫音ちゃん♪昨日も可愛かったけど、今日も可愛い♪」

そう言いながら、俺の向かいに座っていた紫音の隣へ遠慮なく座った母さんが紫音に抱きついた。

「!!!!」

それを見てガタンッと椅子を大きく鳴らして、勢いよく立ち上がった俺。