「悪い。何か言いかけてたよな?」



何度驚けばいいんだろう。


また変わった表情……



でも、彼女の手の指先を握る先輩の手には、まだ甘さが残っていて……そっと触れてるような…そんな感じの力加減が見て取れた。



「い…え……何でもないです」

「そお?」

「はい」

「じゃあ」


「帰ろ」

『さようなら』



先輩は一言私へそう言ったあと彼女に向き直り、手を握り直された彼女はペコッとおじぎをして、二人はこの場を後にした。


そして私はといえば、

友人の漏らしていた言葉と、意味深な態度の意味をほんの一時で理解していた。




"一先輩を名前呼びとか……"


"身のためだよ"


"当たってみればわかるよ"


"全てを知ってこい"




それを思い出しながら、



「先輩のあの表情……どっかで……」



ふと、さっきの甘い表情の先輩が頭に過り、それに思考を巡らせた……