見えちゃうけど、好きでいて

「気安く俺の体を触るな」

汚いものを払うように手を離すと、季衣の顔を覗き込んだ。

「酷いクマだな」

季衣は男に顔をまじまじみられ、恥ずかしくなったのか、思い切り顔をそむけた。

「おい、離れろ」

突然突き放され転びそうになりながら男を見上げた。

男の身なりはしっかりとしている。

スーツにネクタイ、品のある顔立ち。綺麗にセットされている短髪。

「お前、一体何なんだ?」

「あ、ご、ごめんなさい。それじゃ……」

季衣は深くお辞儀をして、男の横を通り過ぎていった。