「御兄様」
「なんだい?妹様」
「私達以外の化狐(ばけご)はいなくなってしまいました。皆様、人に連れていかれた」
「…我らは双狐。伝説とされる…」
「えぇ」
「我望新狐 望者」
「我双狐 リンカ」
「我双狐 セイヤ」

彼ら双狐は望んだ。新たな私達の意思を持つ者が現れる事を。


双狐達は不老不死と言えども、お腹はすく。彼らは飢えた。
そして、人を食べた。

「御兄様。人って美味しいのね」
「そうだな…」
死にゆく人が最後に見たのは、双狐の笑い顔。

こうして、飢えを越えた。


時が経った。

双狐は少し大人になっていた。
双狐の間には小さな子供がいた。

「レント…こちらへ」
「兄の元へ…」

2人はその子に、レントと名付け可愛がった。そして、彼がまた少し大きくなって、双狐達は不老の力により子供のまま。

「兄者…姉貴様」
「レント…私は嬉しいよ……」
「人が人を捨てるなど有り得ぬ行為。捨て子だったレントを育て、ここまで…」

レントは捨て子だった。親の顔を知らず、双狐の顔も知らず。ずっと仮面を付けたまま。

「兄者…姉貴様。どうして仮面を外してはならぬのでしょうか?」
「人を捨てた者。その人の顔を晒してはならない。本当の親に見つかれば大変だ」
「見つかり次第その人間は消す。これが私達で決めた決まり。お国でいう法律」
「そうですか…」
「私達の存在が人に知られでもすれば…昔の様に……」
「妹様…。レントが来る前に、1度人に里を知られ襲われた。その頃は人を喰らうことを知らなかったから対処ができなかった」
「……僕が生まれる前…とても大変だったのですね」
「私達の家族と言ってもいい程大事な化狐だったのに」
「だが、そのお陰でもあるが、人を喰らいわかったことがあった」
「なんですか…?」
「知っての通り、私達は人の生涯を終え、新たな者へと変わった者。とはいえ、人と似た構造に過ぎない。でも、人を喰らい続けると、体内の血液があまりわからないけれど変化を起こして力を与えてくれるの…それで私達は対抗してる」
「……」
「難しいよね…。でも、私達は人間なんかに負けない……。新たな化狐を探すのよ……」