「…。」

そういう話になってるのね。

「お母さんも、結愛の声の小ささには心配してたのよね。思う存分唄って発声練習してらっしゃい!」

「という訳だから結愛、行くぞ。」

「ゔ、うん…。」

お母さんを上手く丸め込んだ陵に、私は頷くしかなかった。



「ごゆっくりどうぞ。」

駅前のカラオケ店に着き、店員に案内された部屋に私と陵は入った。

「よっし、唄うぞ〜。」

陵は上機嫌で私にデンモクを渡してきた。

それを受け取り、う〜んとにらめっこする私。

カラオケが苦手な私は、ほとんど来たことがなくて、デンモクの扱いに慣れていない。

タッチペンを持って、ゆっくり操作してみる。

いつの間にか音楽が聞こえてきて、隣に座る陵がマイクを構えていた。

「…。」

陵が唄っている歌は、私でも知っている、テレビコマーシャルで良く流れている歌だった。