「……愛ーっ…。」

少しして、お母さんの私を呼ぶ声が聞こえてきたけど、あえてシカト。

陵が来たのかな。

そのままシカトしてたら、私を呼ぶ声が聞こえなくなったから、マンガの続きを読み始めた。

良かった、お母さん断ってくれたんだーーーそう安心した矢先、

「結愛ーっ、カラオケ行くぞ!」

バァンと威勢良く部屋のドアが開き、陵が入ってきたのだった。

「りょ、陵⁈帰ったんじゃなかったの⁈」

「ばーか、誰が帰るか。ホラ早く支度しろよ。」

「わ…私、オナカが……。」

「ンなもん唄えば治る!」

私の必死の抵抗も、虚しいだけだった。

「…下で待ってて。」

それにしてもお母さんがよく許したな……なんて感心している場合じゃないんだけど。


嫌々支度をしてリビングに入ると、お母さんと陵がコーヒーを飲みながら談笑していた。

「結愛、オナカあったかくして行きなよ。」

「お母さん、ホントに行ってもいいの…?」

「あらだって、面接で大きな声が出せる様に練習しに行くんでしょ?」