結婚の約束をしよう

火曜日ーーー今朝も良く冷える朝だった。

「結愛、早くしなさい。智沙はもう行ったのよ。」

「はぁい、行ってきます。」

渋々開けた玄関のドアは、外に出たくない気持ちに拍車をかけるかのように重たく感じた。

「おせーぞ、結愛。」

ドアを開け、風と共に私に飛び込んできたのは、陵の姿だった。

「陵!何でこんなところに…。」

「待っててやったんだろうが。」

「だったら昨日みたいに家の中に入っていれば良かったでしょ、寒くないの⁈大丈夫⁈」

今朝も陵は…防寒着ゼロだった。

「オレ、風の子だから。気にすんなって。行くぞ。」

昨日と同じ事を言って、昨日と同じ様に笑う陵。

「ったく、いつから待ってたの?」

「どうだったかなー…。」

言いながら空を仰ぐ陵ーーー風に揺れる程の長さもない短髪が、太陽の光を受けてキラキラと輝く。

「だって結愛、おまえ昨日嫌そうにしてたじゃん。」

「…とにかく、明日からは中に入って。」

「おう。」

「…。」

そう言って更に笑顔になった陵の横顔を、私は黙って見ていた。